(令和7年3月10日発表)
<購買生産指導部 購買推進課>
北米コンテナ船情勢 | 北米西海岸を中心とする航路では、本船スケジュールに乱れが生じており、主要な乗継航路を含めた混雑が続いています。クリスマス商戦や年末年始の貨物量の増加による影響で、慢性的な混雑は徐々に解消されつつありますが、いまだに一部の航路や港湾では遅れが発生しており、完全に海運情勢が安定するには時間がかかる可能性もあります。中国では旧正月が終了したことで、物流の回復が見られるものの、旧正月中に多くの本船が滞留していたため、荷役作業に遅れが出ることが予想されています。
また、日本国内においては、ゴールデンウィークに向けた船積みが始まっており、国内の主要港を中心に、更なる港湾の混雑を引き起こす可能性があるため、今後の動向には注視が必要です。 さらに、米国では、トランプ大統領が就任以来、複数の関税措置の発動を表明し、各国と貿易に関する協議を行ってきましたが、3月に入ってもその方針を維持し、追加関税を続ける意向を示しています。この追加関税の方針は、米中間の貿易摩擦を一層激化させる恐れがあり、世界全体の貿易関係にも悪影響を及ぼす可能性があります。これにより、海運業界の安定にはさらに時間がかかるとの予測が立てられており、今後も関税措置が与える影響に対して業界全体で慎重に対応していく必要があります。 |
ビートパルプ | ノースダコタ州やミネソタ州をはじめとする主要なビートパルプの生産地では、2024―2025年産の生産と製糖作業が終盤を迎えています。これらの地域では、製糖の工程もほぼ完了し、収穫後の処理や出荷準備が進められる段階に入っています。一方、他の生産地では、5月下旬頃まで収穫や製糖作業が続く見通しです。
また、一部の生産者は、関税措置や不安定な輸出市場に対する懸念を抱えており、将来の収益に対する不安から早急に利益を確保しようとしています。そのため、早期に新穀の販売を開始している生産農家も多く見られ、輸出市場での価格動向に影響を及ぼす可能性も予想されています。 |
アルファルファ | 米国農務省(USDA)および全国農業統計局(NASS)が発表した2024年のデータによると、米国西岸北部(PNW)地域における生産量は前年から大きく減少しました。主要な生産州であるオレゴン州、アイダホ州、ワシントン州の生産量は、いずれも前年に比べて大幅な減少を示しています。オレゴン州は前年比97%、アイダホ州は86%となった一方で、ワシントン州では前年比78%という大幅な減少となっています。
この減少には、いくつかの要因が複合的に影響していると考えられています。まず、米国内での需要が低迷しており、その中でも特に酪農向けからの引き合いが弱くなっていることが挙げられます。アルファルファは主にたんぱく源として用いられるため、酪農家の経営状況に直結する影響を受けます。昨今の経済的な事柄や価格の不安定さ、代替飼料の選択肢が増加したことが、需要の低下に繋がったとされています。 さらに、輸出市場も低迷しており、輸出先として重要なアジアや中東での需要が減少し、市場価格が下落しました。価格の低迷は生産農家にとって大きな痛手となり、利益を確保するために他作物への転作が進んだことが、最終的に生産量の減少に繋がっています。生産農家は安定した収益を得るために、より高収益な作物へとシフトしているという状況です。 これらの要因により、PNW地域全体での生産量は大幅に減少しました。市場が回復するためには、国内外の需要が改善し、相場が安定することが重要ですが、現状ではその回復には時間がかかると予測されています。また、気候条件や農業政策が今後の生産に与える影響も注視されるべき課題となります。 【カリフォルニア州】 カリフォルニア州南部のインペリアルバレーでは、2025年産のアルファルファ1番刈りの収穫がすでに始まっており、早い圃場では3月中旬から下旬にかけて2番刈りの収穫に進む見通しです。 灌漑局の発表によると、2月15日時点でのアルファルファの作付面積は147,431エーカーとなっており、前年同期の146,431エーカーから1,000エーカー増加しています。作付面積の増加は、暖冬の影響を受けて、農業環境が比較的良好だったことが背景にあると考えられます。 |
米国産チモシー | 産地では、米国内外からの馬糧向けの需要が引き続き順調に進んでいるため、産地価格は安定し、多くの産地在庫はすでに売約済みとなっています。
また、2025年産の作付面積は、産地価格が好調なことを背景に増加する見通しです。需要が安定している中で、農家は市場の好調さを受けて作付面積を拡大し、供給の増加に対応しようとしています。特に、馬糧やペット向けの需要が堅調で、これが作付面積の増加を後押ししています。 |
スーダングラス | カリフォルニア州南部インペリアルバレーでは、2025年産のスーダンの播種作業が3月中旬から開始される予定です。一部の輸出業者が保持していた2022年産や2023年産の旧穀在庫を解消しつつあるため、2025年産の作付面積は、2024年産に比べてほぼ同程度か、若干の増加が見込まれています。 |
クレイングラス | (クレインは全酪連の登録商標です)
灌漑局の発表によると、2025年2月15日時点でのクレイングラスの作付面積は22,768エーカーとなっており、前年同期の21,378エーカーから増加しています。 韓国向けの輸出は依然として好調に推移しており、この需要が今後も続けば、2025年産の相場に大きな影響を与える可能性があります。 市場の需要が堅調に推移することで、2025年産の作付面積や相場にもポジティブな影響を与える可能性がありますが、輸出先の市場や需給バランスが重要な要素となるため、引き続き市場動向を注視することが求められます。 |
米国西部州の干ばつ状況およびミード湖の水位について | 現在、米国の北部であるワシントン州やオレゴン州では積雪や降雨があり、乾燥状態が改善されています。一方、南部のカリフォルニア州やアリゾナ州では降雨がほとんどなく、乾燥した気候が続いており、干ばつが悪化しています。
米国内の需要に大きな変化は見られないものの、乾燥状態が続くことで供給面に影響を及ぼす可能性はあります。現時点では干ばつによる相場上昇の懸念はそれほど高くはなく、需給バランスは安定していますが、今後の天候や乾燥の進行具合によっては、相場に変動が生じる可能性もあり、今後の動向については注視が必要です。 特にカリフォルニア州やアリゾナ州の乾燥が続く場合、水資源の枯渇がさらに進行し、農作物の生産に影響を与える可能性があるため、その後の雨量や気象予報に注意を払いながら市場の動向を見守る必要があります。 2020年から2025年3月現在までのミード湖の貯水量の推移(単位:フィート)を振り返ると、特に2023年にはロッキー山脈からの雪解け水やハリケーンによる降雨の影響を受けて、ミード湖の水位は上昇しました(下図の紫線)。しかし、2020年(茶線)や2021年(青線)と比較すると、全体的には水位は依然として低水準のまま推移しており、改善の兆しは見られたものの、水位は十分に回復していないことが分かります。2024年にはミード湖の水位減少を抑えるための対策として、節水を目的としたDIP(休耕地政策)が開始されました。この政策は、水の消費を減らし、長期的に水源を守るための重要な取り組みですが、現時点では水位に大きな変化は見られず、依然として横ばいの状況が続いています。このため、ミード湖の水位回復には時間がかかり、引き続き水問題は長期的な課題であることが伺えます。 今後の水資源管理や降水量の変動、節水政策の効果が、ミード湖の水位にどのような影響を与えるかが重要なポイントとなりますが、現在のところ水問題が解消される兆しは見られず、地域の水利用に対する慎重な対応が求められます。
|
バミューダ | 2024年産の生産は終了しています。灌漑局の発表によると、2025年2月15日時点での作付面積は76,815エーカーとなっており、前年同期の66,347エーカーから増加しています。この増加は、種子相場の好調や馬糧向けの需要が堅調に推移していることが背景にあります。特に、馬糧市場の需要の安定性が作付面積の増加を後押ししています。ただし、作付面積が増加しているにも関わらず、生産量については減少する見通しです。これは、DIPに参加する生産農家が一部存在するためで、その結果、作付面積が増加しても、実際の生産量は減少する可能性が高いと見られています。
このように、需要が堅調である一方で、生産量の減少が予想されるため、市場価格や供給状況に変動が生じる可能性があります。 |
カナダ産チモシー | 主産地であるアルバータ州中部クレモナ地区および南部レスブリッジ地区では、2月中に氷点下10℃~20℃の日が続きましたが、3月に入っても氷点下を下回る日が続く見通しです。これにより、農作物の生育や作業に影響が出る可能性があります。また、気温の低下が続くことで、出荷スケジュールにも影響が及ぶ恐れがあり、降雪による道路状況や物流の遅延が懸念されています。
日本向けの需要に大きな変化はなく、出荷は順調に続いています。需要が安定しているため、出荷量に大きな影響はありませんが、天候による物流面の課題には注意が必要です。 2025年産の作付面積については、競合作物の相場が低迷しているため、大きな増減はない見通しです。 |
豪州産オーツヘイ・ウィートストロー | 2024年産オーツヘイは、地域によって降雨の状況が異なり、作柄に影響を及ぼしましたが、総じて、上級品の発生は少なく、低級品も限定的でした。このため、一部の輸出業者は低級品の供給を補うために、オーツヘイとストローをブレンドして出荷しています。
各産地では、2025年産の播種に向けて生産農家との協議が始まっていますが、現時点での作付面積は昨年並みで、特に大きな増減は予想されていません。降水量や天候条件が重要な要素となるため、今後の気象状況が作付面積に影響を与える可能性はありますが、現段階では生産量の大幅な変動はない見通しとなっています。 南豪州や東豪州では、1月~2月にかけて降水量が少なく、土壌の水分が低下しています。これに対して、西豪州では平均的な降水量があり、生育にとっては比較的良好な条件が続いています。さらに、3月から5月にかけては、全豪の生育地域で例年並の降水量が予想されており、今後の生育にとっては安定した気候が期待されています。 ウィートストローについては収穫作業が終了しており、生産期間中の猛暑や降雨の影響を受けましたが、輸出向けには西豪州からの出荷が見込まれています。発生量は限定的であり、需要は堅調に推移しています。 |